日本農業の最重要課題というべき″世代交代・事業承継〟についてフォーカスし、次世代の農業を担う社長にインタビューする。第一回目の登場は別海町で三代目として酪農業を営む島崎洋介氏。
島崎家における酪農業の始まりは、北海道で戦後開拓が押し進められた時代に遡る。初代島崎昭七(長野県出身)が別海町泉川に入植して七十四年、現在は三代目洋介氏が陣頭で指揮を執る。
Q社長就任から約一年が経過しての率直な感想は?
経営に深く携わるようになり数字を見て不安に思うことがある。今年は飼料など原価が高騰し先行きが不安になるが、元々ネガティブな性格ではない(笑)。酪農は仕事として単年で見るものではないし、将来的には明るいと思っている。そういう意味ではあまり不安を感じていない(笑)。
洋介社長・妻のみゆきさんと二人の子どもたち
Q三代目として守るべきもの、今後も大切にしていきたいものは?
祖父が入植して受け継いできた島崎家の酪農を守りたい。今は父(二代目美昭会長)に追いつくまでの不安やプレッシャーは感じているが更にステップアップしなくてはという思いや「この地域を守る」という思いがある。地域の仲間意識の希薄さを少しずつ感じながら、「過疎化していいのか」「もう一度地域に活力を取り戻したい」と日々動き回っている。世代の入れ替わりで規模を拡大する農家が多い中、本来は一層繋がりやコミュニケーションを大事にしなければならない。今はどうすれば良いのか模索中だ。
傍らで見守っていた妻みゆきさんは「どうしてこんなに頑張っているのだろうと不思議だった。家族内が平和であれば良いと思っていたが、今は次の世代の十人に一人くらいは主人を見てこういう人になりたいと思ってくれたなら、この世界も閉鎖的にはならないのではと思います」と語る。
Q三代目として新たに取り組んでいきたいものはあるか?
酪農を魅力ある職種と感じてもらえるようにしていきたい。そのために規模拡大、生産基盤を磐石にした上で、新規就農者の育成に携わっていきたいと考えている。
二点目はこれからの時代にマッチした酪農の分業スタイルを確立していきたい。牧場運営業務を細分化し分業することで新規参入希望者にとりハードルを低くするような仕組みを作りたい。これらについて具体化に向け、「三代目モデル」を構想中だ。
取材を終えて
今回初めて洋介氏とじっくり話をすることができた。その中で彼の熱い思いに触れ、若くして既に「利他の精神」を強く持った人であると感じた。それは家族から愛情を注がれて育った洋介氏だからこその「家族愛」が為せることだと強く感じる。そんな彼と共に、横で終始笑顔を絶やさず優しい眼差しを注ぐみゆきさんを見ていると、この先の島崎家、ひいては別海町の未来に期待せずにはいられない。
(廣田)
●㈲ジェイファームシマザキ
○住所:北海道野付郡別海町泉川57番地11
○酪農部門:成牛500頭、若牛初任150頭、育成子牛180頭、年間出荷乳量4360t
○肉牛部門:交雑種肥育牛110頭
○施設:
・本社〜育成施設、初任、乾乳牛施設
・共栄牧場〜搾乳施設、哺育施設
○管理農地:所有農地290ha、借地管理農地200ha、
○従業員数:14名(搾乳施設7名、乾乳・分娩・哺育施設5名、育成施設2名