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【ファーマーズドリーム】
「酪農が好き!酪農が面白い!」職人気質の酪農家を訪ねて

今号では、前号の取材先である「四代目中澤農園」から紹介を受け、株式会社ユートピアアグリカルチャーで酪農事業部取締役場長を務める工藤悟さんを取材した。日高町で放牧酪農を行う、まさに職人気質の酪農家だ。幼い頃からの酪農に対する思いや、今後の未来へ向けた思いを語ってもらった。
HP:https://www.utopiaagriculture.com/about/

100%酪農の仕事をする!

牧場を訪ねたのは、雪が散らつく12月初旬。寒さの中、笑顔で迎えてくれた工藤悟さんに案内され牧場へ向かうと、そこかしこで何やら安心仕切った様子でくつろぐ牛たちと対面。そんな牧場を管理する若き放牧酪農家、工藤氏とは?
平成二年生まれの32歳。モンキーパンチの故郷、浜中町で酪農業を営む家に生まれ、幼い頃から、遊び場は牛舎で小学生の頃から仕事を手伝っていた。その頃から「100%酪農の仕事をする」という思いでいた。実家は第三者に経営を譲渡したが、「いつかは、新規就農のような形で自分の酪農をやる」という強い思いは持ち続けていた。江別の酪農学園大学を卒業後、本州に渡り酪農従業員として仕事をしていた際、昔からの知人であった酪農資材メーカーの社長に遭遇。ちょうど某菓子メーカーの社長から、「自社で牧場をやりたい」と相談を受けていたその資材メーカーの社長を介した縁で、2018年から、ここ日高町で放牧酪農を始めることとなった。

 

穏やかでのびのび育つ牧場の牛と工藤悟さん

 

「職人」としての酪農家

離農案件になりかけていたこの牧場。本社がある札幌からも近く、六次化を進めるには好条件ということで、会社がこの牧場を引き継いだ。取締役場長となり四年。一年目は日高の環境、牛それぞれの性質を鑑み、どういうやり方がベストなのか手探り状態、二年目、三年目で放牧のやり方を確立した。昨今酪農業界は厳しくなりつつあるが、基本的なことをきちんとやり、情勢に合わせたやり方で突破口を見つけたいと語る。酪農に携わって27年。やりたくてやっている仕事。うまくいく時、そうじゃない時はあるが、やれば上手くなる。持論として「仕事もやりたいことをやった方がいい」という考えがある。工藤さん自身がまさにそうだ。工藤家は、戦前の開拓民として始まり酪農家として悟さんで四代目。「昔は家業だと思っていたが、今は、土、草、牛にこだわりを持ち、自分にしかできない方法で、職人的な考え方を持ってやっている。そこに成果があるとやりがいを感じるし、楽しい」と話す。

 

今後の目標と未来

楽しくやっていると言うが、やはりこの先は「独立」が目標。雇用されていることに対し、農家の息子ということもあるのか、「馴染めないでいる」のも事実。自分のやり方で、もっと理想的なものを突き詰めたい。
経営者になるためには、自分が持っている知識を伝え、人を育てなければと「後継者」についても考え始めている。
また、若い世代が地方から流出し、地方経済が高齢化していく中、農家が減ってきていることに胸を痛める。農業は基幹産業なのに…。そんな中で「尊敬する人」として鹿追町の中野牧場代表中野大樹さんについて話をしてくれた。「経営者になると、自分の生活だけではない。中野牧場さんは、人のため、地域のためにと、色々な所に関わりながら、牧場をきっかけに、コミュニティーを創出している」と。経営者としての手腕に加え人間力も持ち合わせた人と称賛する。工藤さん自身も、そんな先輩の姿を見つめながら「自分の事業のその先」を考えているようだ。
職人気質で酪農中心の生活を送っているが、自然の中で遊ぶのが好きと趣味の釣りについて語る工藤さんはやはり32歳の若者。しかし、その瞳は酪農をきっかけとした地方の未来の在り方を見据えていた。

(舩島 修)

2023_01_01 | 1・2月号 2023年 ゆめさぽ イーハトーブ ファーマーズドリーム | ,