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特集記事

2023_05_22 | 2023年 5・6月号 事業承継 連載 | , , | 編集部イーハトーブ

【事業承継 ~ 次の主役たち】
〜食卓に並びやすい安心安全な玉ねぎづくりを〜
札幌市北区 熊木農園 熊木 大輔氏に聞く

日本農業の最重要課題というべき〝世代交代・事業承継〟シリーズ6回目の今号では札幌市北区で農業を営む、熊木大輔氏に話を聞いた。

事業承継〜自分流の模索

玉ねぎを主として栽培を行う熊木農園は大輔氏で4代目。32歳で新規就農の助成金を受けつつ事業を承継し、今年で8年目となる。
代々続いてきた中で、そのやり方を引き継ぎながら、自分流に変えていく点においては、現在も奮闘中。この点について父は、自身が苦労したせいか、承継時にはさほど口も手も出さず任せてくれた。失敗もあったが自分で試行錯誤を重ねた。玉ねぎは年に一作。保守的になりがちだが、農薬や肥料の調整など、色々挑戦した。簡単ではなく、この期間については10年20年分の経験を積んだ気がする。そうして3年目から収量が上むき現在は右肩上がりとのことだ。
また、経理については妻のひとみさんが担っている。大輔氏の母が銀行勤めをしていたことがあるそうで、ひとみさんは母に教わりながら、熊木農園を支えており、夫婦二人三脚で農園を営んでいる。

 

元気いっぱいのお子さん絃くん、亮太くんも畑に出て夫妻をお手伝い!

 

食卓に並びやすい玉ねぎを届けたい

玉ねぎはどの家庭でも食卓に登場する頻度の高い野菜だろう。スーパーでも幾つもの玉ねぎが、山となり売られている光景が見られるが、読者の方々は、いつも目にするこの野菜に注目したことはあるだろうか?
玉ねぎについて色々と質問をすると、玉ねぎの品種は大輔氏が知る限りで20〜30種類ほどあると言う。通年を通し売られる玉ねぎだが、私たちへ届けられるまでの過程についても聞いた。まず2月にハウスの中で種を蒔く。定植するまでのこの時期は特に子どもを育てるように大切に扱う。4月の今が一番神経を使うと言い、毎日ハウス内を何往復もして、管理する。そして4月下旬に定植。8月上旬から下旬の間に収穫、日持ちをさせるために乾かしたり選別したりを9月に行う。夏に登場する新玉ねぎは水分が多く、秋以降のものは実がしっかりした日持ちのするものとなる。
また、大輔氏は「子どもや家族に食べさせたいものを皆にお裾分けするイメージ」で玉ねぎを作っていると言う。試行錯誤を経て、現在農薬は慣行栽培の2分の1、化学肥料は3分の1まで減らし栽培している。自分が家族に食べさせたい、安心・安全で、こだわりが詰まった中でも食卓に寄り添える、手の届く「いつもの贅沢」を感じてもらえるような食材を提供していきたいと語った。

 

地産地消〜地元のものを地元の方

大輔氏には「地元で取れたものが体に合う」という持論がある。熊木農園の玉ねぎは6月〜11月の間、篠路の農協直売所で販売している。今後はこの直売に力を入れていきたい。また、地域の学校給食に関しても働きかけ、現在少量ではあるが卸を行なっている。その他地元の小学校で出前授業を行ったり、社会見学先として受け入れを行ったりしながら地域との繋がりを深めている。
また昨冬は、Soup Stock TokyoとJA札幌青年部とが手を組み「地域と繋がる」をテーマに札幌の店舗限定で「季節のボルシチ」が販売された。勿論、熊木農園の玉ねぎも使用されており、Soup Stock TokyoのInstagramやホームページでも夫妻の働く様子も掲載されている。
地域と繋がりながら、そこに住む人々の体に合う玉ねぎを届けていきたい。

 

取材を終えて

「自分たちが食べたいものをお裾分けするように〜」と語った大輔氏。言葉の端端から、決して利己的ではない、優しさや実直さを感じた。是非彼の作る、優しい玉ねぎの味を感じてみたい。

(廣田 陸奥夫)

 

●企業データ

住所:北海道札幌市北区百合が原4 ‒2 ‒7

○作付品目

玉ねぎ:4.8ha

馬鈴薯:0.5ha

夏野菜(直売用):30〜40種類

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