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特集記事

2018_05_07 | 2018年 5・6月号 特集 | , , , , | 編集部イーハトーブ

“木と生きる、木と暮らす”
~当麻町の取り組み~

当麻町の森林面積は約1万3千㌶とマチ全体の65%を占めます。その豊富な森林資源をどのように活用し、マチを活気づけていくのでしょうか。菊川健一町長にその取り組みをお聞きしました。

町産材カラマツ100%の新庁舎が年内に完成

菊川 健一 町長

 

林業に関することで新しい動きはありますか。

菊川

町産材を100%使った新庁舎を3月5日に一部オープンしました。カラマツを使ったこれほどの大規模な建物は日本では初めてです。フローリング、家具、そして職員の机に至るまで、使用している木材は全て町産材です。数年前に造った公民館「まとまーる」は町産材を90%使用していましたが、新庁舎は100%です。住宅と同じ工法で建てたので柱の多い昭和の中期の建て方で行い、耐震基準も十分に満たしています。木造で100年は優にもつ建物を提案していただきました。

カラマツは数十年前までは、ねじれと松脂のため、炭鉱の坑木にしか使えませんでした。それを道がねじれと松脂を処理する工法を開発しました。その工場は栗山町にあり、そこに運んで処理してもらいました。
工事は昨年4月から始めました。一期目の工事は2月末に完了し、今の庁舎を解体し、残りの工事に着手し、11月に完成します。昭和の中期の建て方ですから、それに伴って、昭和の頃の心のこもった住民サービスを心がけようと思っています。ただ、外壁はメンテナンスが大変なので鉄板で覆っています。

 

公民館「まとまーる」

 

 

町産材を100%使用した新庁舎内

 

2度町民への説明会を行いましたが、今回の新庁舎の建設に関しては、一人の反対もありませんでした。町産材を100%使ったこと。無理に柱を減らして建設単価を抑えようとしなかったこと。専用議場を造らず、議場も町民に開放するなど、町民ファーストに徹したことなどが高いご支持を得たと思っています。

 

–  昔、管内は林業が盛んな地域でした。

 

菊川

わがマチも昔は道内有数の木材工場がたくさんありましたが、民間木材工場は全部なくなりました。近隣町でもそうです。道内の地域がさびれていった大きな要因は、林業の衰退だと思っています。
私自身、改めて町産材の大切さを感じたのは、2004年の台風18号の被害を目の当たりにしたのがきっかけでした。この地域の山林も強風により大きな被害を受けました。大きな木が真ん中からボッキリと折れている現場を何カ所も見ました。風雪に耐えて、ここまで育ってきたのに、一瞬の強風で木の命が絶える。その木を見て木が泣いていると感じた。これは大事に育て、大事に使用しなければならないと痛切に感じました。

 

木は燃やすものではなく使ってあげるもの

菊川

わがマチは今「食育 木育 花育」に取り組んでいます。「食育」は食の命を我々はいただいているのだから、命のありがたさや大切さを身近に感じようというものです。「木育」は先人が植えた木の恵みに感謝し、大切に使っていこうというもの。「花育」は花への優しさやいたわりの心を学ぼうというものです。「木育」の一つの集大成が新庁舎の建設に繋がったと思っています。
今、バイオマスが注目されています。木は燃やす活用もありますが、使ってあげるものです。木は伐って、使って、植えて、育てるという50年サイクルの循環産業です。だから、私は今懸命に木を使ってあげようと思っています。新庁舎ではバイオマスを使いますが、コストがかかって大変です。バイオマスを使うことによってコストが低くならなければならない。燃やすだけだと管理費が高く、将来に繋げづらい。木を燃やして電気をおこすにはもの凄いエネルギーが必要です。昔は木を燃やして電気をおこした。その後、石炭に変わり、石油に変わり、原子力に変わってきたという時代背景があります。

 

林業でマチの活性化を

菊川

5年前から町内に新築住宅を建てる時、町産材の木材に対して、250万円を上限に補助する取り組みを始めています。だんだんその取り組みが浸透してきて、昨年には新しい商店が4軒も進出してきました。商店が少なくなってきている時代の中では画期的なことです。当麻町出身者が1軒、当麻町とは縁もゆかりもない人たちが3軒。一昨年も2軒の開業があり、わがマチの取り組みが広く理解されてきていると感じています。
また、地元の森林組合に50年の長期ビジョンを作ってもらいました。それに沿って循環型社会を確立していくつもりです。その森林組合にも毎年若い人が3〜4人も雇用されています。
そして、林業と農業関係の事務所を一緒にしました。全国でわがマチだけの試みで、先に取り組んだ農業合同事務所の設置にあたっては、少し抵抗がありましたがうまくいっています。林業に従事している人はまちがいなく農業にも従事しています。1ヵ所に事務所を構えたほうがうまくいくわけです。これからも林業がマチの活性化に寄与していくはずです。

 

  今日はお忙しい中ありがとうございました。

 

●当麻町役場

北海道上川郡当麻町3条東2丁目11番1号

TEL: 0166・84・2111

 

 

 

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