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特集記事

2023_03_22 | 2023年 3・4月号 ゆめさぽ イーハトーブ 事業承継 連載 | , | 編集部イーハトーブ

【事業承継 ~ 次の主役たち】
〜子ども達の未来が輝く畑作りを目指して〜
むかわ町穂別 株式会社東農場 東 洋一さんに聞く

日本農業の最重要課題というべき〝世代交代・事業承継〟シリーズ第5回目は、むかわ町穂別で農業を営む、東洋一さんに話を聞いた。

事業承継〜現在の課題

洋一氏の代で4代目となる東家。平成28年に法人化するタイミングで事業を引き継ぎ、現在は・父・母・妻とベトナムからの外国人技能実習生を加え、稲作をメインに、繁殖親牛50頭を飼育している。
事業承継にあたり、苦悩した点を尋ねると、経営に携わる上で、何も無い状態からやらなければならないことも多数あったが、法人に移行したタイミングで税理士に依頼しその点はクリアした。仕事に関しては、良くも悪くも「親がやってきたこと・言われたこと」を続けてきたが、昨年からは、興味のあった「有機栽培」を始めたという。
承継時、親の実績が大きい中で、どうやって自分たちのやりたい事をやっていくか、という壁にぶち当たるという話も聞くが、東家の場合は、気にかけてくれつつも、ほぼ洋一氏に任せてくれているということだ。
さて、承継から6年、現在の課題について聞いた。
コロナ禍を経て、ここ数年の間に、消費者はオンラインで自分が欲しい物を自由に購入できる時代となった。消費者にとって選択肢が大きく広がる中、農業界においても消費者に認めてもらう物をどのように作っていくかが課題だと語った。

 

愛情溢れる東家。洋一さん、双子の陽輝くん、陽月ちゃん、奥様

 

農作物にも選択の自由を

そもそも認めてもらうには「知ってもらうこと」が必要だ。ここで洋一氏自身のエピソードを。
食を見直すきっかけがあり、自分や家族にとって「良い食べ物」を選択するようになった。自身で様々な情報を集め、食べる物を選択している。そこで、洋一氏は、生鮮食品や農産物においても「食品ラベル」のようなものがあればと考える。どこの土地で誰が作ったのか、農薬など生育段階でどのようなものが使用されたのか等、情報を明示した上で、農作物においても消費者が選択できる時代を作りたい。

 

未来へ繋ぐ思い

「有機・自然栽培」の農作物を今後は増やしていきたいと語るが、その上での目標は明確だ。
1つは、必要な栄養素を網羅するような「栄養豊富な米」を作ること。日本人にとって、米は大切な主食。食べることは生きること。健康でいるために、元気で強くなる物を作る。現在、農作物の栄養価や抗酸化力は50年前と比べ、かなり低下していると言われているそう。洋一氏は、改善には「土壌づくり」からと語る。生態系を理解した上で、土壌を整え、糖度やエネルギーだけではない、品質の高い農作物を作りたい。
また更には「種」の自家採取も目標としている。野菜の種は海外からの物や遺伝子組み換えが施されて入ってくる物があるが、そこから元に戻し、土地や気候に合った物を作れる体系にしていきたい。
そして3点目は、学校給食について。自身も双子の子を持つ洋一氏には、「地域の学校給食をオーガニックに」という願いがある。子ども達の成長を担う「食」。その点に関して「農家」としての責任は大きいと感じている。 また、その取り組みを通して、子どもから親へ、ひいては社会にも変化が起こるのではと期待する。
これらを形にするのに大切なのは、仲間や組織づくり。長期的なビジョンを持ち、皆で底上げを図る。ここ穂別は仲間意識が強く「一次産業を未来に繋げたい」という思いの仲間がいる。少しずつでも変えられる部分から変えていく。穂別の若い力が熱い。

 

取材を終えて

いっときの利益ではなく、長期的な観点から事象を俯瞰して見つめ、地域や子どもたちのための農業を志す。「東洋一」トウヨウイチとも読むことができる。名は体を表す。今後の彼の活躍に期待したい。

(廣田 陸奥夫)

 

2023_03_22 | 2023年 3・4月号 ゆめさぽ イーハトーブ 事業承継 連載 | ,