IHATOV|イーハトーヴWEB北海道|北海道のフリーペーパー

IHATOV|イーハトーヴWEB北海道|北海道のフリーペーパー
  • 紙面版を見る

特集記事

2019_11_18 | 11・12月 2019年 スマート農業 特集 | , | 編集部イーハトーブ

スマート農業の今、そしてこれから

ICTやロボット技術を活用して、省力・高品質生産を実現する新しい農業を「スマート農業」といいます。そのスマート農業の現状はどうなっているのか。そしてどんな課題が見えてきたのか。JA士幌町(士幌町)とJAピンネ(新十津川町)を取材しました。

トラクタの自動操舵装置をいち早く取り入れた先進地JA士幌町

 

スマート農業を取り入れる進取の気性

士幌町をエリアとするJA士幌町では、いち早くトラクタの自動操舵装置を取り入れました。自動操舵トラクタは、直線走行時のステアリングを自動でアシストするものです。
「芽室町に北海道農業研究センター(北農研)という農水省管轄の研究施設があります。平成25年に、十勝でトラクタの自動操舵の実証実験をするので参加しませんかというお誘いがあり、そこからスマート農業への関心が始まりました」と同JA農産部農産課の仲野貴之さんは話します。
「その実証実験の現場では、トラクタを自動で真っすぐに走らせるだけではなく、そのことにより作業体系も大きく変わると直感しました。熟練の運転技術がなくても、誰でもトラクタを操作することができる。そのことにより人手不足の一助にもなり、正確な植付・管理作業ができるので収量や品質も上がるだろうと感じました」
一部の農家の方も、その可能性に気付き、購入する農家が少しずつ増え、口コミでその良さは町内に広がりました。まだ国からの補助もほとんどなかったので、同JAが直接支援することになりました。この装置により、農家の営農意欲も高まるし、収量や品質の向上が図れます。
また、士幌の特産品である馬鈴薯、ビートなどの重量作物の作付面積減少に歯止めをかけるためにも補助は必要と判断しました。
2年間、自動操舵装置購入に対する支援を行いました。その間、町内の畑作農家の7割近くが導入しました。今では、自動操舵トラクタが300台ほど町内の畑を走っています。

 

自動操舵トラクタの実演風景

 

情報のやり取りをタブレットで

一方、同JAでは、スマート農業のソフトの部分でも取り組みを進めています。今年度中に、組合員全戸にタブレット端末を無償貸与し、動画や画像を用いて、営農指導を行います。
農家とJA間の情報のやり取りは大事な生命線です。同JAでは、十勝にあるJAに先駆けて、30年以上も前からFAX通信を行っていましたが、今日のスマホの普及に伴い、タブレットの使用を始めることになりました。これは道内では初めての事例になります。

 

今後のスマート農業に期待すること

「これからの技術として選別ロボットに期待しています。農業ではやはり選別作業が一番の重労働です。特に、馬鈴薯の選別は大変です。ポテトハーベスター上での選別や工場の前処理行程などマンパワーに頼らなければならない場面が多々あります。それを省力化できる機械は大部分の農家やJAが待ち望んでいます」と仲野さんは今後の技術開発に期待を寄せます。
十勝では一番の販売額を誇るJA士幌町。そして、太田寛一氏や安村志朗氏を輩出し、進取の気性に富んだJA士幌町では、これからもスマート農業に積極的に関わっていきます。

 

JA士幌町

河東郡士幌町字士幌西2線159番地

TEL: 01564・5・2311

 

 

新十津川町でスマート農業技術の開発・実証プロジェクトを展開 JAピンネ

 

家族経営型スマート農業を目指して

JAピンネの本所のある新十津川町で、今春から2年間の事業として、スマート農業技術の開発・実証プロジェクトが展開されています。

同町は、道内有数の米どころとして高品質・良食味米生産に意欲的に取り組んでいますが、農家の高齢化などにより農家戸数が減少。1戸あたりの経営面積の大規模化は避けられない現状にあります。

そこで将来1戸あたり約30㌶を見据えた大規模水田をスマート農業の先端技術で利活用するためにこのプロジェクトが始まりました。町、JA、町内農業関係団体、北海道クボタが一体となり、「オール新十津川」で取り組んでいます。

 

挨拶する熊田義信新十津川町長

 

今春から次々と実証実験を行う

実証農場は町内で、水稲・トマト・野菜を栽培している白石農園で行われました。

主な実証実験として、4月、「ロボットトラクタ」の高度なGPSと自動運転技術により、リモコンによる遠隔操作で無人での自動耕起や代掻きを実施。また、無人機と有人機を同時に使用し、効率的な作業も実施しました。
5月にはGPS位置情報を利用してステアリングを自動で直進方向に修正する「直進アシスト田植機」による田植え、6月には「水田センサー」により、水田の水位・水温・湿気状況をリアルタイムにスマホなどで確認、「自動給水装置」は設置可能な14筆の水田で実証しました。
その他に、ほ場の生育状況を撮影し診断する「センシング用ドローン」、法面を安定走行する機動性を有し、遠隔操作で草刈り作業ができる「ラジコン草刈機」、1フライトで最大1ヘクタールの散布が可能な「農業用ドローン」などの実証実験を行いました。
そして、10月7日(月)に今年最後の実証実験として、自動運転アシストコンバインの稲刈りが行われました。機械はクボタ自脱型コンバイン「ディオニス」で全国初お目見え。自動走行だけではなく、刈り取った穂の水分量、タンパク値、収穫量も瞬時にわかる最新機です。
同町では、2年間の実証実験により、家族経営でも持続可能な大規模農業〝 新十津川モデル〟の構築を目指していきます。

 

クボタコンバイン「ディオニス」

 

JAピンネ

樺戸郡新十津川町中央6番地29

TEL: 0125・76・2221

 

 

2019_11_18 | 11・12月 2019年 スマート農業 特集 | ,