日本農業の最重要課題というべき〝世代交代・事業承継〟についてフォーカスし、次世代の農業を担う社長にインタビューを行うシリーズ。第3回目は、上川郡剣淵町で農業を営む、森武佑太社長に話を聞いた。
Q法人化に至った経緯とは?
父親が65歳の時に経営移譲され、それから7年経った昨年、法人化を行った。その背景には「今後は人を雇い入れ、組織を大きくしていきたい」という思いがある。現在は従業員を抱えていないが、自分1人の力では限界がある。社会保険などを完備し、安心して働ける環境を整えた上で、「働く場」を提供し、雇用主と従業員として、支え合う関係を作っていきたい。また、子育て世代の方達にも空いた時間に収入を確保できる場を提供し、少しでも社会の一助になればという思いもあった。
代表の森武佑太氏。収穫したジャガイモを抱え満面の笑みを浮かべる。
Q法人化から一年、感じることは?
法人化に伴い以前より煩雑な手続きが増えたように思う。色々勉強も必要だと感じる。現状具体的な変化は感じていないが、取引先への周知が進んでいるため、今後メリットが感じられるのではと考えている。
Q現在の課題は?
今は農作業優先で、営業や商談に時間を割くことが難しい。晴れても雨が降っても「現場」での仕事が待っている。このままでは発展がないと思いつつ、人手の問題で自分が作業するよりない。地域農家同士、共同作業のような形で、労働力不足を改善する仕組みも整えていきたい。余裕ができたら、もっと経営面に力を入れていきたいところだ。
Q今後チャレンジしていきたいことは?
現在37ヘクタールある畑を50ヘクタールくらいまで拡大していきたい。大豆・小麦をメインとしながら、手間をかけてでも単価が取れる野菜を作っていく。有機栽培の認証を得ており、じゃがいも、かぼちゃ、大豆を育てているが、手間がかかる上、昨今の異常気象もあり、収穫量が通常のものより少ない。面積を増やそうとも思っていたが、色々な状況を見て判断していきたい。
走り出したばかりの会社。社会貢献等できるようになっていけばいいが、まずは経営を軌道にのせたい。攻める所は攻め、先の状況を想像しながら模索し、プランを練り、実現できるよう努力したいと思っている。
また、剣淵町の農家メンバーで構成される「株式会社けんぶちVIVAマルシェ」や「畑のがんこもの組合」のメンバーでもあり、周囲のメンバーの経営方法も参考にしながら、一緒に勉強し、ステップアップしていきたい。
そして、最近はコロナの影響もあり、対面での販売をなかなか行えていないが、「野菜ソムリエ」の資格を活かし、消費者との交流の機会を増やしていきたい思いもある。
更に、働き方として、これからは農家でもしっかり休める環境を整えていきたい。今は纏まった休みを取ることが難しいが、プライベートや家族との時間を充実させることも必要だと考えている。
取材を終えて
森武氏は3人の子を持つ父親で、取材中、1年生の男の子がやって来ると、優しい父親の顔になっていた。同じ町に手本となるリーダーがいる(VIVAマルシェ代表・高橋氏)。取材を通し、優しさの中にある彼の強い意志に10年後は間違いなくそのリーダーの役を担えるだろうと感じた。今後の展開が楽しみだ。
(廣田 陸奥夫)
●企業データ
■住所: 上川郡剣淵町屯田町385番地
■作付面積: 大豆 12ha、小麦 7ha、キヌア 6.5ha、ビート 4.5ha、馬鈴薯 2ha、その他 5ha
2022_10_27 | 11・12月号 2022年 ゆめさぽ ゆめぴりか イーハトーブ 事業承継 連載 | 農家, 農業